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koyanの明石

Mac、TV、映画、カメラ、イタチ、猫等についてボチボチ語ります。書いているのはおっさんです。

「木暮荘物語」(三浦しをん)は木暮じいさんが一番面白い

 

 ここのところ三浦しをんばかり読んでいる。この本も近所の古本屋で彼女の本をいくつかまとめて買ったもの。体調の悪さは徐々にではあるけれど、上向きな気がしてきている。そこにこの作品。いい具合に刺さったかもしれない。ちなみにちょこっと登場する「メモ」とは、わたしが読書中に書き留めているメモのことです。

 木暮荘という古いアパートに住む人々と、彼ら彼女らにかかわる人々のハナシが綴られている。文庫本のフォントが大きめで、老眼のわたしにはありがたい。章は七つに分れており、それぞれに主人公が設定されている。

 まずは木暮荘203号室の坂田繭(さかたまゆ)、26歳、女性。花屋の店員をしている地味な女の子。昔別れた元カレが、今カレ?と居るところに戻ってきて、てんやわんや、というハナシ。まあ、ヌルイ。一応男2人に囲まれる形の繭であるため、想像するに内心悪くない気がしているせいだろう。とっとと元カレと決別するなり、いっそのこと3Pしちゃうなり、すればいいと思った。ひどい男だ、わたし。

 2番目は木暮荘の大家である木暮じいさん。101号室に入る。70歳過ぎ。とあることがきっかけで、木暮じいさん、セックスがしたくてしょうがない。しをんさんよ、老人の性で遊んじゃいけませんって。

 このハナシが一番面白かった。てか、少々というかかなり先輩ではあるものの、木暮じいさんの悩みは、わたしの悩み。世の老人男性の悩みなのである(本当にそうか?)。ということで共感すべきところが多いわけだ。でもね、絶対に相いれない違いはわたしとじいさんの間にあるんです。彼は性欲のせいでセックスがしたくなったわけではないということ。そう簡単に、気軽に、セックスできる環境、状況ではないがゆえに、んん、ゆえにじゃないけど、セックスをすべきだと、否、どうすればセックスできるのだろう?、という迷宮に迷い込んだ子羊なのです。

 翻ってわたし。いやいや、そんなハナシは聞きたくないだろうから、止めておきます。まあ、土台というか基礎が違いこそすれ、どうすればセックスできるか?という迷宮自体は、似たような構造であるわけで、いろいろ感じるところがあったわけ。木暮じいさんにはデリヘル嬢のちなつちゃんをおススメしておきます。てか、それしか、ない。悲しいけれど。

 3番目は峰岸美禰(みねぎしみね)、28歳、女性。通勤駅の後方の柱になぜか水色の男根が生えてくるのを見つけた彼女。他の人は気づかない、が、ただ一人の見るからにヤクザ風の男性がそれを凝視している?。奥手の女性と1,000人斬りヤクザのほのぼのとしたおハナシ。「ある程度共感できる」とメモに書いてあった。何が?。

 4番目は1番目に登場した坂田繭が務める花屋の夫婦のハナシ。隣に喫茶コーナーみたいのがあって、旦那が対応している。この夫婦、以前は死ぬほどセックスしまくっていたらしいのだが、最近は音沙汰なし。ある夜ふと気づくと、旦那が夜中に出かけている!。完全に浮気を疑っている妻は、繭とともに夜中に外出した夫を追跡する。

 う~ん、ラストの方でようやく盛り上がってまいりましたが、そのままオチなしで終わった感じ。「ここまで不作だぞ、木暮じいさん以外は」とのメモあり。

 5番目は神崎(かんざき)、2年前の就職時に201号室に。ボロアパートゆえに生活音が筒抜け。そのボロさを利用して神崎は隣の202号室(空き部屋)に侵入し、階下の102号に住む女子大生の生活を覗く日々。

 この神崎、かなりの変人で、女子大生のダラしない生活を改善したいと思ったり、そのたくましさに憧れすら抱くようになったり。尋常じゃないです。ある日、過去の男に襲われそうになった女子大生を、部屋に飛び込んで助けるのですが、その後の彼女のセリフに度肝を抜かれる神崎。わたしだったら即死だわ。

 でもね、最期はこの女子大生が菩薩に見えてきましたよ。ふむふむ、いいね、彼女。

 と言う流れで6番目はその女子大生の光子、102号室。このハナシはとてもとても悲しい。光子がどれだけ辛い思いを、その小さな体に背負って生きてきたか。それを表現する言葉すら、わたしは持っていません。

 ラストは号泣です。「はるか」を知ってしまったことで、光子の悲しみはさらに深くなってしまったのだろうか?。他の人にとって当たり前のことが、当人にとってとてつもなく遠いことがあることを、忘れてはいけないと思う。メモより。

 最後の7番目は瀬戸並木(せとなみき)。1番目の坂田繭の元カレです。彼は繭をあきらめてアパートから再び出て行ったのですが、が、が、未練たっぷりに花屋の繭をストーカーしております。そんな彼を週に一度同じ花を買いに来る女性客、北原虹子(きたはらにじこ)に現場で声をかけられる。

 そこからこの二人の奇妙な関係がはじまります。この並木、基本モテるやつでくやしい!とメモありw。要はニジコが店員の繭を気に入っており、かといって百合ってわけでもなく、繭を心配して並木に声を掛けたら、そんな危険な人物でもないんで、念のために、監視のために、自分のマンションに並木を住まわせるという。ね、わけわからないでしょ?。しかし、ニジコにはニジコの複雑で特別な事情がありました。

 でもおハナシはこの並木の決意で終わりを迎えるのです。木暮荘の住人でもないんだけれどね。最後にメモからそのまま書きます。

 決してメインキャラでもないニジコと並木。木暮荘の暖かさを描写した後、並木が捨ててしまった愛、間違えた彼の行動、それを気づかせ、木暮荘のような場所を自分が持てるよう、人とのつながりを改めて考え、前に踏み出そうとする並木。

 ニジコは彼についていける?。いっしょに暮らしていける?。その結末は書かれていないが、しっかりと存在する未来に期待したい。たいへんだろうけれどね。メモ終了。

 というわけで、すっかり長くなってしまいました。最初の方はおそらく体調のせいもあって、イマイチな感想だったのですが、とてもいいハナシをいくつか読むことができました。それだけで大満足です。おススメです、ぜひ読んでください。