古本屋で目に留まった本。わたしは男なのでけっきょく女性のハナシが読みたいんでしょうか?。ハツラツとしたJKが主人公のハナシも好きだし、この作品の裏表紙にあるように、女性のみが四人暮らす杉並の古びた洋館、ってだけで心惹かれるところがあります。三浦しをんは初だと思う。
お嬢様然とした母親の鶴代。お年はいくつなんだろう?、娘の佐知が37歳だからわたしと同じような年齢であろうか?。佐知は事実上の主人公、というかこの作品の登場人物のハブのような存在。刺繡がお仕事という珍しい職業。刺繍教室も開いてます。お家での作業がほとんどなので、あまり外出しないタイプ。
この佐知と渋谷のハチ公前で何とも言えない出会いを果たしたのが、友人の雪乃。同い年。保険会社勤務でヨーガが趣味。美人系なのになぜか印象に残らない顔という、これまた面白い設定。
雪乃の会社の後輩である多恵美。27歳。三人の中で唯一男との話題に事欠かない。というか、本条という元カレに現在ストーカー、とういうかストーカーとも言い難い微妙な位置取りが不安の種。以上が杉並の洋館に同居しております。
そうそう、離れの掘っ立て小屋には山田という血のつながりの全くないじいさんが住んでます。いぶし銀の存在。高倉健ファン、笑える。
さて、ストーカーの本条ですが、このマメではないストーカーに対する苛立ちの表現がとっても面白かった。この文章でわたしは三浦しをんのファンになったと言っても過言ではない、かもしれない。
もうひとつ、シルバーパスで渋谷と池袋間のバスに、一日中乗車を続けるおじいさんのハナシ。彼に対する佐知の想いが面白く、さらにファンとなったしだい。読み終わった後から思うと、この二つのハナシがこの作品の文章表現のピークだったと思う。
おっともうひとつ。壁紙貼りの梶という男が、タペストリーに興味があると聞いた後のくだり、ヤキモキさせる長さがとても上手でした。
後半で突然現れるカラスの善福丸。なんやお前という感じでしたが、この布石は終盤で活かされます。ただし、その種明かしも「そう言われるとそうともとれる」程度の表現に対する説得力しかわたしには感じられませんでした。もちっとそれ臭さを入れておいてもよかったのでは?、と。
この作品、ベースはあの谷崎純一郎の「細雪」だそうです。四人の名前がね、ちゃんと細雪の四姉妹と似ていると。谷崎の~~周年の記念として依頼されて書かれた作品だとか。その辺は末巻の解説に書いてあります。
というわけで、なかなかにお気に入りになってしまいました、三浦しをん。ちょこっとググったのですが、あの「舟を編む」の作者さんとか。本は読んでませんが、アニメと映画を観た記憶があります。今の在庫が軽くなったら、また買おうと思います、三浦しをん。おすすめです。てか、ドラマあるんですね、この作品。でも、河童のミイラのくだりを読みながら、頭の中でドラマ化のイメージを浮かべたのですが、日本のドラマじゃこの面白さもちゃっちくなっちゃうね、という結論しか出ませんでした。でも、観てみたい、ドラマ。