自分で選ぶのであれば、一生出会うことすらないだろう本が今回のお題。とある伝手でなぜか読むことになったのですが、なんじゃこの内容は?。アッラーが怒って他の神を拝むんじゃないぞ、地獄に落ちろ!、などと激しく仰ってます。
そもそもこの世の神はアッラーだけ。唯物神。それが回教の聖典であるコーランの教え。多神教なんぞもっての外、キリストだってただの使徒であって、神の子ではないと。だから拝みまつるのはアッラーだけにしなさいと、ご本人が仰います。
コーランは元もとは話し言葉で伝承されてきたそうで、本にされることすら許されなかったそうな。そのアラビア語は荘厳な雰囲気を醸し出し、本にしたらすべてが伝わらないと。
しかし話し言葉である以上、行っちゃえは口語体なわけで、アラビア語ゆえの独特な技巧による節回しにより、その本意が伝承されてきたのだけれど、口語体に訳しちゃうのもアリでしょ?とやってしまったのがこの井筒俊彦らしい。なんでもコーランが本になったあとも、アラビア語以外の翻訳は許されてなかったのだが、解説本として出せば大丈夫だとアチラの人に聞いたそうな。
てな顛末が末巻の解説に書かれておりました。荘厳さは読み取れないが、本来の話し言葉で読むことに意味もあろうと。なんたってとっつきやすい。とっつきやすいが、前述したとおり、アッラーがそのまま語り掛ける体をなしているので、最初は何言ってんだこの神様は?、となってしまう。
ところが不思議なことに頑張って読み進めていくと、なんだろう?、なにかに惹かれてしまうのですよ。例えば、宗教関係にまったく疎いわたしが、そうか旧約聖書がユダヤ教で、新約聖書がキリスト教なのね、みたいなとんでもなく基本的なこととか、その時代の宗教観なんかがなんとなく透けて見えてくる。
それにしてもアチラの神様はとても人間じみている。アレしちゃだめ、コレしちゃだめ、でも改心するなら許すよ、でもあんな奴らは地獄に落ちるのだ、ざま~ない。みたいなことを延々と語ります。
面白いのは高利貸しが嫌いで、利息はいくらまでと超具体的なことまで決めてます、アッラーは。結婚や遺産相続までも非常に事細かに定めていて、神というより法律そのものみたいな気もしちゃう。
というわけで、なかなかに読むのが難しい本ではあるのですが、少しずつ出てきた興味のおかげで、上巻すべてを読み終えることができました。もちろん中も下もあれば読みたいのですが、成り行き上再びかの人から借りる算段になってしまい、わたしは待つのみ。忘れられなければ、いつか先に進めるでしょう。