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koyanの明石

Mac、TV、映画、カメラ、イタチ、猫等についてボチボチ語ります。書いているのはおっさんです。

「家族八景」(筒井康隆)は七瀬が主人公ではない

 

 さて問題の「家族八景」です。なにが問題かというと、以前ココに感想を上げた↓

koyan.hatenablog.com

にて、この作品の主人公である七瀬をメインとした三部作のシリーズものということを解説で知り、なおかつ、この「七瀬ふたたび」は題名が表すように1作目ではなく、シリーズの2作目であることが判明したからであります。で、その1作目ってヤツが今回読んだ「家族八景」であると。ね、問題でしょ?w。

 そこで今回のお題。そうです、この「家族八景」を読んでわたしは感じました。この作品の主人公は七瀬にあらず、それぞれ8つの章に登場する家族こそが主人公なのでした。七瀬は各家庭にお手伝いさんとして住み込みで働き、主人公であるそれぞれの家族の構成員の心の中を浮き彫りにするために存在する、という結論に達したわけです、個人的に。あ、七瀬は人の心の中を読める特殊な超能力をもっており、その能力を自分以外の人間に知られることを恐れ、住居を固定せずに、比較的短期間で入れ替わる、お手伝いさんという職業を選んだわけ。

 わたしは当然のように1作目ということで、七瀬の生まれや育ち、如何にして超能力に目覚めたか?とか、その能力をどのように研ぎ澄ましていったか?とか、人に知られまいと心の中の葛藤はどんなものであったか?、などの七瀬の半生というには短いですが(「家族八景」の作品の中で20歳を迎える直前)、それらを期待していたわけです。

 その期待は裏切られ、逆に1作目を読まずに2作目である「七瀬ふたたび」を読んだことを、後悔せずに済みました。たしかに1作目から出会っていれば、2作目の七瀬の活躍ぶりにより感動できただろうことは、否定できませんが。「大人になったね~、ナナちゃん」と。

 閑話休題。長くなりました、ココから「家族八景」の簡単な感想です。この直前に読んでいた本がコチラの↓

koyan.hatenablog.com

でして、2015年の作品です。しかも好きになってしまった三浦しをん。そして今回の作品は1972年のもの。その隔たりは43年ですよ、恐ろしい。さすがに古臭い感じは否めません。なんか文体が硬く、失礼ながら筒井康隆、三浦しをんより文章下手じゃんと思ってしまうわたしがいました(超個人的感想)。続編である「七瀬ふたたび」の方がより読みやすかった記憶があります。

 お題にある通り8章構成でして、超能力感応者である火田七瀬がお手伝いさんとして、転々と、そうまさに短期間の雇用として、8つの家族を渡り歩く。

 例えば1章。心の全く通わない家族。2章。13人家族のやたら汚い家。ここまで読んで冒頭にあるような感想を抱きました。主役は七瀬にあらず、その家族の生き様なんだと。その生き様を鮮明に浮き立たせるために、七瀬のテレパスとしての能力が活かされていると。

 3章で初めての感応中の死を経験する七瀬。4章くらいから七瀬の個人的感情に踏み込んだ記述が入ってきます。自分の能力との向き合い方で悩む七瀬。でも、より個人的な情報は開示されません。父親が七瀬に対し水蜜桃のイメージを抱くのですが、さすがわ筒井康隆、エロおやじです。

 5章。心理学の助教授の家。七瀬の能力がバレるかもしれないという危機が訪れます。が、最期は何とも悲惨で最悪な終わり方。エロおやじはこういう展開も好きなんでしょうか?。

 6章はスワップものかと思ったら、前章と打って変わって円満な結末。7章は結局親子3人ともクズだったという...。最後の8章はまたまたエグイ終わり方。棺桶の中で焼け死ぬなんて、ホントにあるんだろうか?。

 七瀬が働いていた期間が約2年。もうすぐ20歳の誕生日を迎えるところで終わります。当初は痩せぎすな少女だった七瀬も、しっかりと女性の体に変身しているようです。さすがエロおやじ。そういう記述は落としません。

 というわけで、章を重ねるごとに徐々に面白くなってきた印象。この連載で筒井康隆は主人公である火田七瀬を気に入ったのでしょうか?。だから2作目の「七瀬ふたたび」を書いたと。そんな風に思える流れを感じました。その流れを含めてオススメしたい作品です。

 実は今、シリーズ3作品目を読んでいる途中なんですが、これがまたかなり良いんですよ。読み終えたら感想書きますね。そうそう、あと、ちょいとググったら、このシリーズもドラマ化(映画?)されてたんですね。「家族八景」の七瀬役はあの木南晴夏ちゃんですよ。観たい、観たいよ~。