有島武郎の文学作品。聞いたことはあっても、読んだのは今回初めて。ちょっと前に読んだ「蟹工船」(メモ)となぜかダブりました。
有島の元を訪れたまだ幼さを残した少年。彼の持って来たスケッチに非凡なる才能を見出した有島。ずっとこの少年のことを気にしながらも、次に会えたのが彼が立派な青年になってから。
突然送られて来た絵と手紙。有島は居てもたっても居られず、北海道の岩内(のそばあたり?)へ旅立つ。大雪の中、宿に現れた彼は筋骨隆々の大きな青年になって居た。そして、一晩話をしただけで、別れ。
彼の話から、有島はその生活を想像して文字にする。彼は北海の漁師。その過酷な描写が思わず「蟹工船」を思い出させる。
そして、彼の、そして、多くの才能を持って生まれた彼と同じ若者たちの、生まれいずる悩みを思う、有島であった。
そんな感じのお話。いきなり彼の生活風景が描写され始めて、なんで有島が知っているんだと驚いたんですよ。そしたらそしたら、そう、有島の文学の才能により生み出された想像描写だったんですね。
面白かったですよ、とても。彼が大好きな山のスケッチを、目の前の本物と比べるところ。なにやら、オーディオの世界とダブらせてしまいました。ウチの買ったばかりのオーディオシステムは、かわいいコンポーネントばかり。現物の楽器との違いは歴然とあります。彼の画用紙のスケッチよりもはるかに劣る。でも、それを承知で楽しんでますよ、オーディオだから。
閑話休題。おすすめです、好きな作品。